2020年1月16日(木)

「グラウンドから見た入替戦」 前編

 

 2019年12月7日。立教大学ラグビー部は5年ぶりに笑顔でシーズンを締めくくった。県営熊谷ラグビー場Aグラウンドにて行われた関東大学対抗戦A/Bグループ入替戦で、長年のライバルである成蹊大学に23-21で勝利を収めたのだ。会場は大歓声に包まれた。立教大学ラグビー部に関わる全ての人々が待ち望んだ「Aグループ昇格」の瞬間だった。あの時、グラウンドやベンチにいた彼らは、何を見て、何を感じていたのか。4年生8人がグラウンドレベルから見た最後の入替戦の景色を語った。

津田祥平…2019年度立教大学ラグビー部主将。ポジションはWTB。入替戦当日はウォーターボーイとしてチームを見守り、鼓舞し続けた。チームの精神的支柱。

床田聖悟…副将。ポジションはFB。入替戦当日はゲームキャプテンとしてチームの先頭に立って皆を勝利へ導いた。チームの戦力的支柱。15番。

真貝隆平…主務。ポジションはCTB。入替戦当日は主務としてメンバーに付き添い、的確な指揮で試合の運営を完遂させた。

海野雄大…ポジションはPR。入替戦当日は3番ながらフルタイム出場。最前線で体を張り続けた。

藤原大晃…ポジションはWTB。入替戦当日は11番かつエースキッカーとして計18得点を挙げ、昇格の立役者となった。

下山達也…ポジションはLO。入替戦当日は逆転がかかった後半の重要な場面から出場し、19番としてブースターの責任を全うした。

髙橋駿介…ポジションはFL。入替戦当日は20番として後半の早い時点から出場し、魂のタックルで攻守に貢献した。

林知宏…トレーナー。入替戦当日はメディカルトレーナーとしてグラウンドに入り、アップ指導だけでなく試合中のケアなど丁寧なサポートで選手を支えた。

 

 

—試合前、チームはどんな雰囲気でしたか。

津田「主将から見て、非常にリラックスできていて良かったと思います。この日のために全てをかけて1年間を過ごしてきたので、もちろん緊張感はありましたが良い具合に落ち着いた雰囲気でした。」

 

―いつもと違う環境での大一番に対し、運営やサポートで気を付けていたことはありますか。

「普段と環境が違うので初めてのことが多く、選手に影響しないか心配でした。例えば試合前のアップです。グラウンドに行く前に行うセルフアップをウォームアップ場でやることになったのですが、そこの静けさが選手に過度な緊張を与えてしまうのではないかと思い、真貝と話して音楽を流すか真剣に検討したんです。でも下手に普段と違うことはしない方がいいと結論を出し、その他の場面でも極力いつも通りに進むよう努めました。」

真貝「ウォームアップ場は密閉されていて無音だったんです。そんな環境で普段アップすることなどなかったので、少し心配していました。」

―先制トライは成蹊大学でしたが、どう思いましたか。

海野「先制トライは自分のペナルティが原因だったので非常に焦りました。しかもそのペナルティが二回連続だったのでレフリーに悪い印象を与えてしまったのではないかと不安でしたが、修正が大事だと気合を入れ直しました。」

 

―前半26分にペナルティゴールで差を詰めました。トライではなく3点を狙ったのはなぜですか。

藤原「前半は少しでも点を入れておきたかったので、最初の得点は3点でもいいから、とにかく15m以内だったら狙っていこうと前日のミーティングで話し合っていました。風もなかったので、蹴ろうとすぐに判断しました。」

 

―31分には床田さんのキックから藤原さんのトライ。見事な連携プレーでしたが、作戦通りでしたか。

床田「ばっちり作戦通りです!(笑)日頃からハイパントキャッチやキックを織り交ぜたプレーはかなり練習していたので、取るのが彰太郎(楢崎彰太郎・4年・14番)でも大晃(藤原)でも迷わず蹴っていたと思います。」

藤原「君島さん(君島良夫キッキングコーチ)が教えにいらしてくださった時に、あの形は何度も練習していました。普段の試合形式の練習からゲームプランとして積極的に取り入れていたので、その成果ですね。」

 

―前半終了間際にも得点しました。6点差で試合を折り返す展開についてはどうでしたか。

津田「この調子なら後半3、4トライ差つけて勝てるんじゃないかと思いました。全然負ける気はしなかったです。」

床田「プレーしていた側としては少し違う印象があります。先制トライのように自陣で主導権を握らせたら得点されてしまうのではと後半への警戒を強めていました。ただ前半ラストに大晃のトライで差を広げて折り返すことができたのは、皆のメンタル的な負担を考えても大きかったと思います。」

真貝「毎年入替戦では前半リードしても後半に巻き返される展開ばかりだったので、不安が拭えない様子の選手も多かったですね。」

藤原「自分がコンバージョンキックを決めて7点以上の差をつけていれば、もう少し気も楽になれたんじゃないかと内心焦っていました。」

床田「それは間違いない(笑)」

 

―後半3分に13-14に逆転され、15分には13-21に。この成蹊の連続得点はどう受け止めましたか。

津田「やはり入替戦は展開が読めないです。どちらにとっても絶対に負けるわけにはいかない試合なので、成蹊も死に物狂いの勢いでしたね。」

床田「誰も落ち着きを失ってはいませんでしたが、全員が心の底ではかなり焦りを感じていたと思います。あと、ひとつ文句を言いたいのは海野の表情です。得点された直後、皆動揺する気持ちを抑えて顔を上げてチームトークしていたのに、海野だけ俯いてぐったりしていたんです!あの顔を見たときはもうひっぱたいてやろうかと思った(笑)」

一同「(爆笑)」

海野「本当にすみません(笑)」

津田「俺もハーフタイムの時、下根(下根光博・4年・17番)に『海野がかなり疲れているだろうから、精一杯ヨイショしとけ』って言ったんだよ(笑)」

海野「え、俺は下根から何も言われてないよ(笑)」

一同「(爆笑)」

藤原「でも二本とも成蹊FWの強力なアタックで取られた得点だったので、防戦一方の立教FWは体力的にも精神的にもかなりきつかったと思います。後半疲労が溜まってきたところでゴリゴリ押されて逆転されるのは例年と同じ展開で、苦い思い出が蘇りました。」

―後半の流れを変えるきっかけとなったのはどのプレーですか。

床田「彰太郎がハイパントキャッチで相手と競ったあたりかな。そこで流れが変わったと思います。前半ハイパントキックが噛み合わない場面もあったのですが、大晃と話して後半から修正したので、蹴ることにためらいはなかったですね。」

海野「スクラムが後半徐々に持ち直したことも流れを引き寄せたと思います。前半押され気味だったスクラムの改善の要因としては、ハーフタイムにロッカーでチュン(太田知宏・4年・分析)が前半の映像をすぐにパソコンで見せてくれて、FW全員でジョージさん(山本貴治FWコーチ)と修正点を洗い出せたことが大きいです。調子が出ないときは試合中に修正することをずっと意識してきたので、入替戦でそれができたことはチームの糧になったと思います。」

 

―床田さんがうずくまって林さんが駆け寄る場面がありました。客席の皆は頭を抱えていましたが、あの時はどんな思いでしたか。

「よりによって床田かと心底ヒヤリとしました。ただ一緒にメディカルトレーナーとしてグラウンドに入っていた土屋さん(土屋篤生トレーナー)が交代して床田を診てくれたのですが、『問題ない、大丈夫だ』と断言していたので、土屋さんを信じ心配はしていませんでした。床田を土屋さんに任せて自分は裕二朗(金子裕二朗・3年・7番)を診ていたのですが、あいつ気が動転していたのかテーピング巻いてほしいと頼んできたくせにじっとしないでウロウロするんですよ(笑)おかげで4年目の最後の試合で自分史上一番下手なテーピングを巻く羽目になりましたね(笑)」

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